熊よ!熊よ! プロローグ:聖テフェリーとその科学的福音2
2015年1月5日 連載 コメント (8)ではいったい、人間はどうやって瞬間移動ー“PW”するのか?
公式記者会見で、テフェリー・アカデミーの渉外部長スーラク・トンプソンはこう説明します。
スーラク「PWの訓練とは、ちょうど赤ん坊が歩くことを訓練するのに似ていますーそれは多くの人にとって未知の体験ですが、一度覚えてしまえば歩くことと同じくらい自然で当たり前の行為なのです」
記者「・・・どうもまだ飲み込めないのですが、“PW”するとは、いったいなんなのですか?」
スーラク「精神を集中することで、ある場所から別の場所へ一瞬で移動することです。例えばニューヨークからシカゴまで、一瞬でね」
記者「ニューヨークからシカゴまで、ですか?ひとつも道具を使わずに?」
スーラク「その通りです。ただしPWする前に、今いる場所とこれから行く場所を正確に記憶しなければなりません。さもないと、PWした人は空中に放り出されるか、壁の中に到着してしまうかもしれないのです」
記者「なるほど、きちんとした訓練が必要なんですね。ところで、もし私がここからシカゴへPWしたら、着ている服はどうなるんでしょう?私は裸で向こうへ到着しちゃうんでしょうか?」
スーラク「ー裸で出発すればね」
記者「いやあの、つまり着ている服も一緒に瞬間移動するのかって質問なんですが・・・」
スーラク「ご安心ください。PWするときには、あなたの靴も、バッグも、持ち運べるものはなんでも一緒に移動します。ご婦人方の服もちゃんと到着しますよ。残念ながら」
記者「なるほど安心しました。ですが、どうして人間は“PW”できるんですか?」
スーラク「実のところ、人間が瞬間移動できる原理は我々にもまだよくわかっていないのです。ですが、それができることは知っています。ー脳がどうやってものを考えるのかわからなくても、自分が考えてることは知ってるようにね。デカルトの言葉をご存知ですか?彼は言いましたー“我思う、故に我在り”私たちは“我思う、故に我PWする”と申し上げたい!」
これが公式記者会見の概要です。
視覚で記憶することと、精神の集中ーこのふたつを訓練すれば、誰でもPWできました。
なによりも自分がPWできるという信念が重要でした。それらのどれを欠いてもPWはできませんでしたが、究極の限界は空間距離ーかつて1万kmを超えてPWした者はいません。
PWできる距離は惑星の表面に限られ、宇宙を横断することはできなかったのです。
PWは急速に社会へ普及して、3300年代には履歴書の資格欄に以下の項目が追加されました。
PW・クラス(ひとつだけにチェックをつけること)
S(5000km以上) A(2000km) B(800km)
C(200km) D(80km) E(20km以下)
自動車文化はPW文化へと置き換わり、旧アメリカ自動車協会、AAAは、アメリカPW協会、APWAへと改名しました。
移動、運輸手段の急速なPW化は、太陽系それぞれの惑星、衛星で社会、法律、経済秩序の崩壊を招きました。
PW以前の産業は滅び、恐慌と飢餓が太陽系を襲いースラムに暮らす貧民は、農場にPWして家畜や穀物を奪いました。
PW放浪者は世界中に疫病、感染症を広げ、マラリアと象皮病がグリーンランドを襲い、狂犬病は1200年ぶりに大英帝国へ舞い戻り、ボルネオの奥地から、根絶したはずのエボラウイルスが発生しました。
PW強盗団が裕福な地域を襲い、犯罪が横行し、社会はPWによる略奪だけでなく性的、道徳的危険にも直面したのです。
その反動でビクトリア朝めいた異常に厳格な性道徳が復活し、それに対する恐ろしい報復も始まりました。
金星、地球、火星の内惑星連合(インナープラネッツ)と、木星、土星、海王星の衛星からなる外衛星同盟(アウターサテライツ)が保っていた経済的均衡は、PWによって破られました。
貿易が断絶し、インナープラネッツは生産施設の輸出を拒否、アウターサテライツは既に操業している工場を接収、特許協定を破棄しました。
経済戦争はまもなく実弾の戦争となり、34世紀初頭に太陽系全体を巻き込む星間戦争が勃発したのです。
そして今、34世紀ーこの時代は優美で奇矯な破壊と創造に満ちています。
しかし古典主義者やロマンチストたちは、進歩が極度の奇形どうしの結合、不調和な合体から生じることに気づいていなかったのです。
《そう、次なる人間の進歩をもたらすのは、科学的聖人ではありません》
《それを促すのは星の海に捨てられた、狂暴な“獣”なのです》
《ー子らよ、科学の子らよ。さあ貴方たちに聞かせましょう》
《わが夫、熊と目覚めし男“N♂MAD”(ノーマッド)、ガラク・フォイルの復讐の物語をー!》
プロローグ:聖テフェリーとその科学的福音 終
公式記者会見で、テフェリー・アカデミーの渉外部長スーラク・トンプソンはこう説明します。
スーラク「PWの訓練とは、ちょうど赤ん坊が歩くことを訓練するのに似ていますーそれは多くの人にとって未知の体験ですが、一度覚えてしまえば歩くことと同じくらい自然で当たり前の行為なのです」
記者「・・・どうもまだ飲み込めないのですが、“PW”するとは、いったいなんなのですか?」
スーラク「精神を集中することで、ある場所から別の場所へ一瞬で移動することです。例えばニューヨークからシカゴまで、一瞬でね」
記者「ニューヨークからシカゴまで、ですか?ひとつも道具を使わずに?」
スーラク「その通りです。ただしPWする前に、今いる場所とこれから行く場所を正確に記憶しなければなりません。さもないと、PWした人は空中に放り出されるか、壁の中に到着してしまうかもしれないのです」
記者「なるほど、きちんとした訓練が必要なんですね。ところで、もし私がここからシカゴへPWしたら、着ている服はどうなるんでしょう?私は裸で向こうへ到着しちゃうんでしょうか?」
スーラク「ー裸で出発すればね」
記者「いやあの、つまり着ている服も一緒に瞬間移動するのかって質問なんですが・・・」
スーラク「ご安心ください。PWするときには、あなたの靴も、バッグも、持ち運べるものはなんでも一緒に移動します。ご婦人方の服もちゃんと到着しますよ。残念ながら」
記者「なるほど安心しました。ですが、どうして人間は“PW”できるんですか?」
スーラク「実のところ、人間が瞬間移動できる原理は我々にもまだよくわかっていないのです。ですが、それができることは知っています。ー脳がどうやってものを考えるのかわからなくても、自分が考えてることは知ってるようにね。デカルトの言葉をご存知ですか?彼は言いましたー“我思う、故に我在り”私たちは“我思う、故に我PWする”と申し上げたい!」
これが公式記者会見の概要です。
視覚で記憶することと、精神の集中ーこのふたつを訓練すれば、誰でもPWできました。
なによりも自分がPWできるという信念が重要でした。それらのどれを欠いてもPWはできませんでしたが、究極の限界は空間距離ーかつて1万kmを超えてPWした者はいません。
PWできる距離は惑星の表面に限られ、宇宙を横断することはできなかったのです。
PWは急速に社会へ普及して、3300年代には履歴書の資格欄に以下の項目が追加されました。
PW・クラス(ひとつだけにチェックをつけること)
S(5000km以上) A(2000km) B(800km)
C(200km) D(80km) E(20km以下)
自動車文化はPW文化へと置き換わり、旧アメリカ自動車協会、AAAは、アメリカPW協会、APWAへと改名しました。
移動、運輸手段の急速なPW化は、太陽系それぞれの惑星、衛星で社会、法律、経済秩序の崩壊を招きました。
PW以前の産業は滅び、恐慌と飢餓が太陽系を襲いースラムに暮らす貧民は、農場にPWして家畜や穀物を奪いました。
PW放浪者は世界中に疫病、感染症を広げ、マラリアと象皮病がグリーンランドを襲い、狂犬病は1200年ぶりに大英帝国へ舞い戻り、ボルネオの奥地から、根絶したはずのエボラウイルスが発生しました。
PW強盗団が裕福な地域を襲い、犯罪が横行し、社会はPWによる略奪だけでなく性的、道徳的危険にも直面したのです。
その反動でビクトリア朝めいた異常に厳格な性道徳が復活し、それに対する恐ろしい報復も始まりました。
金星、地球、火星の内惑星連合(インナープラネッツ)と、木星、土星、海王星の衛星からなる外衛星同盟(アウターサテライツ)が保っていた経済的均衡は、PWによって破られました。
貿易が断絶し、インナープラネッツは生産施設の輸出を拒否、アウターサテライツは既に操業している工場を接収、特許協定を破棄しました。
経済戦争はまもなく実弾の戦争となり、34世紀初頭に太陽系全体を巻き込む星間戦争が勃発したのです。
そして今、34世紀ーこの時代は優美で奇矯な破壊と創造に満ちています。
しかし古典主義者やロマンチストたちは、進歩が極度の奇形どうしの結合、不調和な合体から生じることに気づいていなかったのです。
《そう、次なる人間の進歩をもたらすのは、科学的聖人ではありません》
《それを促すのは星の海に捨てられた、狂暴な“獣”なのです》
《ー子らよ、科学の子らよ。さあ貴方たちに聞かせましょう》
《わが夫、熊と目覚めし男“N♂MAD”(ノーマッド)、ガラク・フォイルの復讐の物語をー!》
プロローグ:聖テフェリーとその科学的福音 終
コメント
高知でポケカとMtGをしています七〇と申します。
よろしくお願いいたします。
こちらこそよろしくお願いします
でもこれはこれでオリジナルの物語だったんですね!
DNに書くのはパロディか実話SS化とか