熊よ!熊よ!第一章:3億5千万kmの熊2
2015年1月25日 連載 コメント (2)「は、腹が減ったな・・・君はどうだい?」
ひとしきり暴れて落ち着きを取り戻したガラクは優しく語りかけます。誰かが娘への土産に買ったのでしょうか。それはガラクが船内で見つけたぬいぐるみ人形でした。毎日襲ってくる発作的な怒りと虚脱状態のあとで、いつもガラクは人形に話しかけていました。
子どもじみた幼稚な人形遊びでしたが、おかげでガラクは孤独と絶望から来る精神錯乱の危険をなんとか脱していたのですー
「・・・そうだ、食い物と水だ。また調理室へ行かないと。チクショウ、あの味の無い非常食ブロック・・・」
調理室へPWし、目当ての非常食ブロックを手に取ったところで思いがけずガラクが通路の方へ目をやると、外装が破壊され宇宙空間へ露出された裂け目から、暗黒の宇宙でもう長く目にすることのなかった人工的な輝きが視界の端に飛び込んできたのです。まさかと思いながら通路へと向かい、裂け目から宇宙空間を改めて覗くと、先ほどの人工的な輝きがさらに大きくなって幾つもの光源を感じさせるまで近くなっていました。
「おい、くそったれの神さま・・・あれはなんだ?マジなのか?また幻覚か?あんたは俺をかついで笑っているのか?」
そう言ってガラクは裂け目から背を向けました。
「いいか神さま、3つ数えてから振り返るぞ。祈りの言葉なんて知らないが、あれがもし、もし宇宙船じゃなかったらーもうあんたは俺の神じゃない!」
「1」
「2」
「ー3!」
振り返ったガラクの目にはもはや確信するに足る人工物がハッキリと映りました。
「ふ、船だ・・・・・・船だ、船だ、ふねだ!」
叫ぶやいなやガラクは貯蔵庫へPWしました。
「おお、落ち着けガラク!考えろ!そ、そうだ、まずシグナルピストルだ。それから服に空気をいっぱい溜めて、通路の裂け目へー!」
シグナルピストルを手に取り、宇宙服へ空気を充填し、ガラクはまた通路へとPWしました。
「おい、待てよ・・・もしあれがインプランツの船じゃなく、アウトサッツ軍の戦艦だったら?俺は収容所送りになるのか?ーかまうもんか!ここでミイラになるよりましだ!」
そう言ってガラクはシグナルピストルを船へ向けて発射しました。1発、2発ー
「頼む、気づけ!気づいてくれ!」
3発目を発射しようとしたその時、船が明確にノーマッド号へと船首を向け始めたのがわかりました。
「ーこっちへ来る!あれは・・・インプランツ!味方の船だ!帰れるぞ・・・地球へ帰れるんだ!!」
船はどんどんノーマッド号へ近づいてきます。
「帰ったら戦時補償をたっぷりもらって・・・そ、そうだ!カジノでスロットをやりまくるぞ!イカした女たちを両手に抱えて・・・それから・・・それからステーキとビール!お、俺は英雄になれるぞ!奇跡の生還者だ!」
「ああそうだあいつを忘れるところだった!」
貯蔵庫へふたたびPWしたガラクはぬいぐるみ人形を手に取るとすぐに裂け目までPWしました。
ガラクはぬいぐるみ人形を両手に抱き締めると人形と喜びを分かち合おうとしました。
「凄いぞ!俺はヒーローだ!もうゴロツキの人生とはおさらばだ!君は俺の守護天使だ!救いの女神だ!これからもずっと一緒だぞ。さあ一緒に地球へ帰ろう、俺の天使!」
インプランツの船はいよいよノーマッド号の目前まで迫ってきます。
「さあ俺たちを地球へ連れてってくれ!あの懐かしい故郷へー!」
とうとう船体に刻印された船名まで読める距離です。そこにはノーマッド号と同じ所属先を表す“ジェイス財団”と船名である“プレデター号”とありました。
「“プレデター号”・・・いい子だ!強そうな名前だ!さあ俺たちを君の中へいれてくれ!」
しかしガラクがいくら呼びかけてもプレデター号は停船することなく、無情にもそのままノーマッド号を通り過ぎて行こうとしました。
「おい、どうしたんだ?俺はまだここにいるぞ?何故止まらないんだ?」
しかしプレデター号はどんどんノーマッド号から距離をとっていきます。
「うわああああああああーーーーー!!!連れていってくれ!!置いていかないでくれ!!戻ってこいプレデター!!!」
悲痛な叫びとともにシグナルピストルの残弾をありったけ乱射しますが、それもむなしく、もはやプレデター号は遥か彼方へと去っていってしまいました。
ふたたび孤独へと突き放されたガラクは怒りに任せてぬいぐるみ人形を引き裂きました。
いまやガラクの目には先ほどまでの喜びではなく虚無と怒りの炎に彩られています。そして彼自身気づいていない神秘的な灯が魂に宿った瞬間でもありました。
「・・・きさまは俺を見捨てたな、俺を見殺しにするんだな・・・」
「プレデター、滅ぼしてやるー!俺は必ず生きて帰るぞ、プレデター!いつの日かきさまをズタズタに引き裂いてやる!地獄の釜へぶちこんでやる!きさまを破壊してやるぞ!!滅ぼしてやるぞプレデター!!」
「プレデターーーーー!!!!!!」
ひとしきり暴れて落ち着きを取り戻したガラクは優しく語りかけます。誰かが娘への土産に買ったのでしょうか。それはガラクが船内で見つけたぬいぐるみ人形でした。毎日襲ってくる発作的な怒りと虚脱状態のあとで、いつもガラクは人形に話しかけていました。
子どもじみた幼稚な人形遊びでしたが、おかげでガラクは孤独と絶望から来る精神錯乱の危険をなんとか脱していたのですー
「・・・そうだ、食い物と水だ。また調理室へ行かないと。チクショウ、あの味の無い非常食ブロック・・・」
調理室へPWし、目当ての非常食ブロックを手に取ったところで思いがけずガラクが通路の方へ目をやると、外装が破壊され宇宙空間へ露出された裂け目から、暗黒の宇宙でもう長く目にすることのなかった人工的な輝きが視界の端に飛び込んできたのです。まさかと思いながら通路へと向かい、裂け目から宇宙空間を改めて覗くと、先ほどの人工的な輝きがさらに大きくなって幾つもの光源を感じさせるまで近くなっていました。
「おい、くそったれの神さま・・・あれはなんだ?マジなのか?また幻覚か?あんたは俺をかついで笑っているのか?」
そう言ってガラクは裂け目から背を向けました。
「いいか神さま、3つ数えてから振り返るぞ。祈りの言葉なんて知らないが、あれがもし、もし宇宙船じゃなかったらーもうあんたは俺の神じゃない!」
「1」
「2」
「ー3!」
振り返ったガラクの目にはもはや確信するに足る人工物がハッキリと映りました。
「ふ、船だ・・・・・・船だ、船だ、ふねだ!」
叫ぶやいなやガラクは貯蔵庫へPWしました。
「おお、落ち着けガラク!考えろ!そ、そうだ、まずシグナルピストルだ。それから服に空気をいっぱい溜めて、通路の裂け目へー!」
シグナルピストルを手に取り、宇宙服へ空気を充填し、ガラクはまた通路へとPWしました。
「おい、待てよ・・・もしあれがインプランツの船じゃなく、アウトサッツ軍の戦艦だったら?俺は収容所送りになるのか?ーかまうもんか!ここでミイラになるよりましだ!」
そう言ってガラクはシグナルピストルを船へ向けて発射しました。1発、2発ー
「頼む、気づけ!気づいてくれ!」
3発目を発射しようとしたその時、船が明確にノーマッド号へと船首を向け始めたのがわかりました。
「ーこっちへ来る!あれは・・・インプランツ!味方の船だ!帰れるぞ・・・地球へ帰れるんだ!!」
船はどんどんノーマッド号へ近づいてきます。
「帰ったら戦時補償をたっぷりもらって・・・そ、そうだ!カジノでスロットをやりまくるぞ!イカした女たちを両手に抱えて・・・それから・・・それからステーキとビール!お、俺は英雄になれるぞ!奇跡の生還者だ!」
「ああそうだあいつを忘れるところだった!」
貯蔵庫へふたたびPWしたガラクはぬいぐるみ人形を手に取るとすぐに裂け目までPWしました。
ガラクはぬいぐるみ人形を両手に抱き締めると人形と喜びを分かち合おうとしました。
「凄いぞ!俺はヒーローだ!もうゴロツキの人生とはおさらばだ!君は俺の守護天使だ!救いの女神だ!これからもずっと一緒だぞ。さあ一緒に地球へ帰ろう、俺の天使!」
インプランツの船はいよいよノーマッド号の目前まで迫ってきます。
「さあ俺たちを地球へ連れてってくれ!あの懐かしい故郷へー!」
とうとう船体に刻印された船名まで読める距離です。そこにはノーマッド号と同じ所属先を表す“ジェイス財団”と船名である“プレデター号”とありました。
「“プレデター号”・・・いい子だ!強そうな名前だ!さあ俺たちを君の中へいれてくれ!」
しかしガラクがいくら呼びかけてもプレデター号は停船することなく、無情にもそのままノーマッド号を通り過ぎて行こうとしました。
「おい、どうしたんだ?俺はまだここにいるぞ?何故止まらないんだ?」
しかしプレデター号はどんどんノーマッド号から距離をとっていきます。
「うわああああああああーーーーー!!!連れていってくれ!!置いていかないでくれ!!戻ってこいプレデター!!!」
悲痛な叫びとともにシグナルピストルの残弾をありったけ乱射しますが、それもむなしく、もはやプレデター号は遥か彼方へと去っていってしまいました。
ふたたび孤独へと突き放されたガラクは怒りに任せてぬいぐるみ人形を引き裂きました。
いまやガラクの目には先ほどまでの喜びではなく虚無と怒りの炎に彩られています。そして彼自身気づいていない神秘的な灯が魂に宿った瞬間でもありました。
「・・・きさまは俺を見捨てたな、俺を見殺しにするんだな・・・」
「プレデター、滅ぼしてやるー!俺は必ず生きて帰るぞ、プレデター!いつの日かきさまをズタズタに引き裂いてやる!地獄の釜へぶちこんでやる!きさまを破壊してやるぞ!!滅ぼしてやるぞプレデター!!」
「プレデターーーーー!!!!!!」
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