発売日からずいぶん経ってるけど、電子書籍なるものでようやく読めたので感想

にとりんと高槻くんが結局くっつかない辺りが女性作家らしいリアルさというか残酷さというか
もちろん性やら異性装やら恋愛やら青春のさまざまな悩みに翻弄される少年少女達の人生の一部分を切り取った青春グラフィティだと思えば、これからの不確定な未来においてにとりんと高槻くんがつきあうこともあるかもしれないし、マコが売れっ子ママさんになってモテまくりになることもあるだろう

ただどうしても男目線で見るとにとりん自体には全く共感出来ない
高槻くんに告白してフラレるところまではその苦悩や葛藤に共感が持てたけど、そこからあんなちゃんにさらっと告白にいく流れがもう理解不能
変なところで度胸があるというフォローこそあったものの、それと姉の友達に告白する度胸は別物だろうと
特にあの年頃の男子であんなに恋愛の切り替えが早いのはヤンキーくらいのものでしょ
そのかわり最終巻でフィーチャーされてたフィクション込みの私小説を書き出すところはそれまでの演劇の脚本を書いた経験や小説家志望の女の子のインタビューを受けたことや土居の才能に触れたことやらいろんな経験に触発されて、半ば本能的な行動の現れとして凄く納得がいく
ただオナニーしたことを書きまくったり関係者みんなにせがまれてとはいえバンバン読ませていくのは露出狂というか偽悪的というかちょっとキモチワルイものはある

対して一番共感するというか、もっと内面に迫りたいと思わせるのがマコ
コンプレックスがたくさんあって、周りの強い個性に惹かれつつ劣等感も刺激されてしまう二律背反。惚れっぽいけど恋に恋する乙女状態というのを自覚していて、自己評価の低さも相俟って決して告白をしない臆病さ
なにより一番の親友であるにとりんを好きになってしまうも、それを諦めるところなんかはまさに影のヒロイン
それにもましてグッと来るのは、作中さんざん度胸があると修飾されてきたにとりんが取り敢えず進学したのと違って、進学せずにそのままユキさんのお店で働き始めたり本当に度胸があるところ
マコのお母さんも作中に出てきたあらゆる親の中で一番子供に対する理解があるのもおもしろい

にとりんがあくまでも女装をしたいと思っているのに対して、にとりんの想いをずっとリードしてた高槻くんが男装をしたいと思わなくなって、一人の女の子として一人の男の子であるにとりんを好きだと気づくまでの流れなんかはものすごい甘酸っぱくて、だからこそ二人の想いが交わりそうで交わらない、すれ違っていってしまうあたり美しいと言えば美しいし、もどかしい

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